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『続・竹林はるか遠く 兄と姉とヨーコの戦後物語』

「続・竹林はるか遠く」
「続・竹林はるか遠く」

 □ヨーコ・カワシマ・ワトキンズ著、都竹恵子訳

日本人が忘れていた家族愛

 一昨年夏に刊行され、アマゾン書籍ランキングの総合1位を記録するなど話題になった本の続編です。終戦直前、母娘3人が決死の思いで朝鮮半島を脱出。その壮絶な体験描写は、戦争を知らない多くの世代に衝撃を与えました。

 引き揚げ後まもなく母を失い、姉妹2人は肩を寄せ合いたくましく生きていきます。やがて別行動で単身、半島を脱出した兄と再会したところで前作は終了しました。

 本作の舞台は戦後の京都。着の身着のまま引き揚げてきた兄妹がここでどう生き抜いていくのが見どころです。火災、貧困、冤罪(えんざい)、いじめ、差別-兄妹に「これでもか」と襲いかかる苦難の数々。ジェットコースターさながら、読む者に全く息をつかせない描写は前作以上です。

 前作から引き続き一貫して流れているテーマは「家族愛」。いかなる苦難があろうとも、兄妹が力を合わせ、遠く離れた父の意思と、亡くなった母の遺志を受け継ぎ困難を乗り越えていく姿は、私たち日本人が忘れていたものを想起させてくれます。

 前作刊行後「兄妹のその後が知りたい」「シベリア抑留の父はどうなったの」という続編希望の声を多数頂きました。

 折しも戦後70年。私たちの祖父母や両親が味わった戦争体験を、兄妹の「その後」の奮闘を通して知ることができます。米国では「優良図書」に複数媒体で選ばれるなど高い評価を得ました。日本の若い世代にもぜひ読んでもらいたい一冊です。(ハート出版・1500円+税)

 ハート出版編集部・西山世司彦

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