戸津井康之のメディア今昔(27)

一揆映画その背景 伝承される民衆の魂描く

 同作公開前に取材した際、神山監督は「スポンサー探しは難航しそうだが、『郡上一揆』を成功させた今しかチャンスはない。そう考えて全国の賛同者に呼びかけることを決意した」と話した。岐阜、埼玉と場所は違えど一揆映画の製作に懸ける地元住民の情熱は同じで、大手映画会社に頼らない自主製作の方策を見いだした自信が感じられた。

決して昔話ではない

 秩父事件の映画化は、かつて黒木和雄、山本薩夫ら大御所監督が挑もうとしたが、資金面などから断念してきた経緯がある。

 神山監督が「一揆は決して昔話でなく、今日的な問題なんです」と語ったのが強く印象に残った。「国民があえぐ状況は当時と似てはいないか。市民の協力は、そんな時代に我慢ならない声の集積なんだと思います」と製作費をカンパした市民の思いを代弁した。

 「デジタル化などで、従来に比べ製作費を抑えて映画が製作できるようになったとはいえ、手弁当で支援してくれる地元民の力なくして一揆映画は撮れなかったと思います」。こう話す「新しき民」の桑原広孝プロデューサー自身、約4年前に東京の映像会社を退職し、山崎監督をサポートするため岡山へ移住した一人だ。

 映画、テレビ、ラジオ…。われわれの生活を潤し、魅了してやまないメディアの世界。その歴史を、文化部編集委員がたどります。

=続く

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