戸津井康之のメディア今昔(27)

一揆映画その背景 伝承される民衆の魂描く

 平成12年には、岐阜県中部の郡上藩領で宝暦4(1754)年に起きた農民一揆を題材にした「郡上一揆」が公開された。「ハチ公物語」や「遠き落日」など数々のヒット作を手掛けた神山征二郎監督がメガホンを執ったことでも話題を集めた。岐阜県出身の神山監督にとって映画監督を志して以来の念願の映画化だったが、スポンサー探しは難航。製作費約4億円は地元有志から募り、地元エキストラ3500人の協力を得て完成させた。

 その4年後の平成16年には、埼玉県・秩父で明治17(1884)年に農民が明治政府に対し武装蜂起した秩父事件を描いた「草の乱」が公開された。「郡上一揆」が地元住民の出資で製作されたことを知った秩父市民が、神山監督にラブコールを送り、映画化が実現したのだ。

 神山監督にとって秩父事件は郡上一揆と同様、長年構想を温めてきた企画だった。神山監督は「郡上一揆」での経験を生かし、約4億5千万円の製作費を全国の一般市民数千人からのカンパで捻出。エキストラには前作の2倍以上の8千人の市民が集まり、邦画史上最大規模の自主製作映画として今も語り継がれている。

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