前に出ることはおろか、踏ん張ることすらできない。手負いの遠藤は劣勢を覆せないまま、旭秀鵬の突き押しに屈した。
初日から3連敗。左膝のけがを押して強行出場したが、結果だけなく、内容が厳しい。持ち味である粘り腰がまったくなく、万全からほど遠いのは明らかだ。
勝負後の支度部屋。まげを結い直している際に、報道陣から状態などについて問いかけられたが、遠藤は目を閉じたまま言葉を発することはなかった。
3月の春場所のけがは左膝靱(じん)帯(たい)の部分断裂などで、全治2カ月と診断された。立ち合いの稽古を再開した直後は、痛みから蹲(そん)踞(きょ)するのも難しかったという。
相撲を取り始めたのは場所の約1週間前。師匠の追手風親方(元幕内大翔山)は出場するかどうかを直前まで決めかね、弟子の意思を尊重したというが、「稽古不足は間違いない。いつもの10分の1ぐらい。普段稽古する奴がやっていないんだから苦しいよ」と吐露する。
患部にテーピングを施さず、普段と同じように正面からぶつかっていく姿勢からは、心の強さが伝わってくる。初めて大(おお)銀(い)杏(ちょう)を結って土俵に上がる今場所。屈指の人気を誇る24歳は、デビューから14場所目で迎えた試練の夏を乗り切れるだろうか。(藤原翔)