日本の議論

「長生き本当に幸せか」問う筆者…執念消えぬ80代ストーカー、78歳AV女優、高齢者の性と犯罪 

留守録に「寂しいよぉ」

 取材を続ける中で自身も複数の高齢者ストーカーから被害に遭い、「由起さぁん、寂しいよぉ。電話くださぁい」などと、何度も携帯電話の留守番電話に録音された。取材で話を聞くという目的も明らかにしていたうえ、「自分はいい年だ」と思っていたが、相手にとっては違った。

 「デイサービスに通ったり入院したりしていない健康な高齢者には、誰も積極的にかかわってくれない。久しぶりに、しかも年下の異性に受け止められたのは至上の喜び。『楽しかった』で済めばいいが、『運命の人』になってしまう」。新郷さんは取材時に相手の生い立ちから聞き、相手の話す言葉のニュアンスも理解しようと努める。それが、寂しい高齢者にはうれしかったようだ。

 留守録は「伝え忘れたことがあるので、お電話ください」で始まり、次第に幼児化していく。怖がられていると気づかず、一方的に距離を縮めようとする。高齢男性のストーカーの恐ろしさは、「生い立ちから老後の寂しさまで、『全て背負え』とフルパワーで乗りかかってくる」ところだったという。

 「生きる意義や、社会に求められている実感がないのはつらい。誰も将来、ストーカーや売春をしようと思って年を重ねてはいない。明日はわが身だと思います」。人ごとではない高齢者の不安と孤独感。長くなった老後をどう生きるか、考えさせられる一冊だ。

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