東日本歴史事件簿

短銃強盗「ピス健」(上)複数偽名、サーカス仕込みの身のこなし…教員と巡査を射殺し、大包囲網すり抜け高飛び逃走

凶悪犯の逃走として、新聞社の「時事新報社」は同紙10日付で、この「教員巡査殺し事件」の犯人逮捕または犯人逮捕の端緒を与えた者(警察官であるかどうかを問わず)に「純金腕時計(価格100円)」の懸賞を実施するなど、世の中の関心は高まった。また、殺された飯束巡査部長(殉職昇進)が父母妻のほか2男1女と大家族を抱え、模範巡査だったことが伝えられ、各方面から同情が集まった。飯束巡査部長には、一般人のほか、三菱財閥の4代目総帥で男爵の岩崎小弥太から500円、森村財閥を創設した六代目森村市左衛門の次男、開作から300円、味の素創業者の鈴木三郎助から200円、遠山証券創業者の遠山芳三から100円など蒼々たる面々から集まり、計2500円(約200万~400万円程度に相当)を突破した。

警視庁は10日午前零時から一斉に、花柳界、駅、木賃宿、無料宿泊所などに臨検捜査を実施したが、犯人につながる手がかりは得られなかった。

翌日は横浜に出没

所変わって横浜市戸塚町吉田の宝蔵院。11日午前3時、男が押し入り、住職ら男性3人を麻縄で縛り上げた。

宝蔵院の被害者らによると「3時5分ごろに突然裏の台所から入り、電灯を点けてたたき起こし、短刀と短銃を突きつけて声を出すと撃ち殺すと言い、短刀を畳に突き刺した。その後3人を帯で縛り上げ、一時間半にわたって悠々と金目のものを物色、前夜の来客が置いていった現金60円と自転車1台、提灯(ちょうちん)を強奪。犯人は印半纏(しるしばんてん)に手拭いを被り、白いメリヤスの股引をはいた裸足足袋で5尺2寸(約157センチ)ぐらいの男である」

「俺は東京で2人を殺して警視庁に追われている。高飛びするため金を出せ」と言い残していた。

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