ところが本館は今年8月末で閉館し、東京五輪の需要を見越して38階建てと13階建てに建て替えられ、2019年春にオープン予定。五輪を機に都市が変貌する前に「日本のモダニズム建築の価値を世界に情報発信すべき」と考えたマイヤーさんは、各国メディアやSNS(交流サイト)などを通じて「セーブ・オークラ(オークラを救え)」のメッセージを発信、問題意識の共有をはかっている。そしてマイヤーさんとともに、日本のモダニズム建築の発信に力を入れているのが、ライフスタイル誌「カーサ ブルータス」(マガジンハウス)だ。
同誌2015年1月号や公式サイト(http://casabrutus.com/special/japanese-modern-architecture/my-memory-of-okura)には、「なくならないで、私のオークラ」と題し、海外の著名なファンの声が多数紹介されている。「クリエイティブな仕事をしている人たちが宿泊したいと思うのは、オークラ」と英デザイナー、ポール・スミスさんは語り、同じく英デザイナーのマーガレット・ハウエルさんも「未来に残すべき文化財」だと惜しむ。建築家のスティーブン・ホールさんは「本館取り壊しは悲劇」とした上で、「他の方法を模索して、子供たちに受け継ぐべき」と進言している。
同誌の松原亨編集長は「社会運動をしたいのではなく、オークラのファンであり顧客、消費者である立場からの『要望』『希望』を集めてみた。五輪を機会に、新しいものを一からつくるのか、文化的背景を抱える既存のものを、保存しながら使っていく方がいいのか-。考えるための広場をつくりたい」と話す。「実際、サイトへのアクセス数は右肩上がりで増え続けており、海外からも多い」と、同誌デジタルメディアディレクターの木熊太郎さん。