来春から中学校で使われる教科書の検定結果が4月6日に公表された。今回の検定では安倍政権の教科書改革が奏功し、自国の過去をことさら悪く描く自虐史観の傾向がやや改善された。だが、そんな流れに逆行するかのような教科書が新たに登場した。「学び舎」の歴史教科書である。現行教科書には一切記述がない慰安婦問題を取り上げ、アジアでの旧日本軍の加害行為を強調する-。その中身を検証する。
「大勢の兵士の相手をさせられた」
「突然、日本兵が現れて、いっしょにいた3人とともに、軍の駐屯地に連行されました。かやぶきの小屋に別々に入れられ、日本兵たちの暴行を受けました。少しでも抵抗すると、なぐられたり蹴られたり、たばこの火を押しつけられたりしました。その後も、島内各地の駐屯地で、大勢の兵士の相手をさせられました」
これは日本軍が占領した中国の海南島で暮らす19歳の女性の話だという。まるで慰安婦の強制連行があったかのような印象を受けるが、学び舎の教科書では当初、現代史を扱う章で「問い直される戦後」と題し、本文で、こう記述した。
だが検定は「話題の選択が具体の事項に偏っている」と指摘したほか、暴行の表現についても「健全な情操の育成について必要な配慮を欠いている」と断じた。「情操育成」の検定基準が適用されたのは、中学社会科では初めてという。
そして「海南島には、4カ所以上の軍の『慰安所』がつくられ、多くの女性が入れられていました」と続けたため、「激しい暴行が4カ所以上の慰安所でも行われたかのように誤解する恐れがある」と指摘された。検定では、わずか14行の本文すべてを対象に、計3カ所もの欠陥が指摘される結果となった。
さらに元韓国人慰安婦の金学順氏の証言を紹介した。金氏については、平成3年8月に朝日新聞が元慰安婦の初証言とし、「『女子挺身隊』の名で戦場に連行され、日本軍人相手に売春行為を強いられた『朝鮮人従軍慰安婦』」のうちの一人として取り上げたが、金氏が同年12月に起こした賠償訴訟の訴状には「養父に連れられて中国へ渡った」と記載。金氏は別のインタビューなどでは「母に40円でキーセン(朝鮮半島の芸妓)に売られた」とも語っている。