今季の米大リーグ(メジャー)では、日本人投手の故障者が多い。マリナーズの岩隈久志が4月25日に故障者リスト(DL)入りしたのに続き、ヤンキースの田中将大も右手首の腱炎(けんえん)などで28日にDL入り。レンジャーズのダルビッシュ有にいたってはヒジ痛のため今季絶望だ。野手ではジャイアンツの青木宣親が奮起し、マーリンズのイチローも日米通算得点で王貞治氏の日本プロ野球記録を更新するなど奮闘しているが、地味なのは否めない。それでも、NHKは毎日のように衛星放送などで試合を中継している。
そこで、「日本人選手がパッとしない。放送縮小を考えませんか」と聞いてみたところ、NHKの広報局からは「地上波も含めて、昨季とほぼ同じ試合数を予定しています。日本人選手の活躍だけでなく、世界各国から集まった最高峰の選手たちのプレー、ワールドシリーズ制覇をかけた各チームの戦いぶりも、お楽しみいただければと思います」と回答があった。放送縮小は考えていないようだ。
2001年にイチローが、03年に松井秀喜氏がメジャーに渡ったころは、1打席ごとの結果に関心が集まったが、今は野手が安打を打っただけでは話題になりにくい。米国での日本人選手の存在感も変わった。「変化球が多すぎる」など、田中の投球内容が全米の話題になる時代だ。黎明期から円熟期に進んだのではなかろうか。
広島の黒田博樹を取り巻く「男気・黒田劇場」、松井秀喜氏の国民栄誉賞受賞は、メジャーの野球をお茶の間に届けてくれたNHKの存在抜きに語れない。
しかし、メジャーの放映権料は安くはない。米紙の報道によると、2003年から6年契約で2億7500万ドル(約325億円)だったという。「契約については、守秘義務があるためお答えできません」(NHK広報局)とのことで詳細は不明だが、今でも相場は変わらないといわれている。
錦織圭(日清食品)の活躍でNHKの海外テニス放送が増えた。欧州サッカー、NFL(米プロフットボール)など、NHKは海外スポーツ入門者にいい番組を提供してくれている。それが、公共放送としてのひとつの役割だろう。
だからこそ、受信料を払う立場になれば、そろそろメジャーへの資金を違う分野にまわし、適切な費用対効果を求めたいとも思う次第である。
(運動部編集委員 村田雅裕)