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わが国の通信市場が昭和60年に自由化され、新規通信事業者が誕生してから今年で30年。国内市場への競争の導入と国際競争力向上の妥協の産物だった「NTT再編」は、いまや制度疲労に直面している。規制をめぐる官民の攻防は、技術的優位を世界市場で生かせない特異な日本の通信市場を産んだ。通信事業者の成長と攻防の足跡を追う。
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NTT社長の鵜浦博夫(66)は今年2月、総務省の幹部を密かに訪ねた。
「ルールを変えなくてもやれる。新しいサービスの芽を摘まないでほしい」
鵜浦は、同月からNTTが始めた光回線の卸売りにあたるサービス「光コラボレーション」に、過剰な規制をかけぬよう理解を求めたのだ。
従来、NTTの光回線を使った高速大容量(ブロードバンド)の通信サービスは「フレッツ光」としてNTT東西が販売していた。光コラボは、その個人向け販売を、他の通信事業者や異業種に任せるものだ。
NTTにとっては、頭打ちとなっている光サービスの普及を加速するメリットがある。他社と同じ条件でNTTドコモにも光回線を卸し、同社の固定通信販売に道を開くことが、NTTの大きな狙いだった。