素材ウォーズ(下)

炭素繊維、EVやFCVが追い風 トヨタやBMWが採用 日本3社は投資加速

ミライに使われている東レの炭素繊維
ミライに使われている東レの炭素繊維

 鉄の4分の1の重さで、強度も高い炭素繊維が、電気自動車(EV)の普及や燃料電池車(FCV)の登場を契機に採用を広げている。高級スポーツ車の板材などが中心だったが、トヨタ自動車が昨年12月に発売したFCV「ミライ」で構造部品に採用し、独BMWはEV「i3」の骨格に使用。世界シェアの5割以上を握る東レ、帝人、三菱レイヨンの日本勢は、大量生産に備えて部品に成形する時間を短縮したほか、設備投資やM&A(合併・買収)などで生産態勢を拡充している。

成形時間を約1分に短縮

 水素と酸素の化学反応で電気をつくって走るミライが採用したのは床部分、水素タンクの補強材、電極基材に水素などを拡散する層の3カ所。そのうち構造部品の床部分での使用は、加熱すると柔らかくなる炭素繊維と樹脂の複合材料をトヨタと東レが共同開発したことで可能になった。

 従来の加熱で固まる複合材料は、金型に注入して加熱したり炉内で焼き固めたりして部品に成形してきた。これに対し、熱で柔らかくなる複合材料は、プレス成形ができるため、時間が従来の5分の1以下の約1分まで短くできる。

 東レの大西盛行専務は「金属に近い工程なので、自動車メーカーの生産に適している。まだ採用は1部品だが、ほかの部品にも使われる画期的な材料だ」と語る。帝人もプレス成形できる炭素繊維の複合材料で、米自動車最大手ゼネラル・モーターズ(GM)から素材の認定を得ている。

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