異色アンソロジー、小説大全「冒険の森へ」 北方謙三さんら5作家

北方謙三さん
北方謙三さん

 ■心震わす面白さ追求

 ジャンルは不問。「心を揺り動かす面白さ」を基準に物語性に富んだ20世紀の日本の小説を集める。集英社が創業90周年記念企画として、そんな異色のアンソロジー『冒険の森へ 傑作小説大全』(全20巻)を12日から刊行する。編集委員の一人、北方謙三さん(67)に作品選択に込めた思いなどを聞いた。(海老沢類)

 アンソロジーの題名は冒険小説というジャンルを指すわけではない。

 「冒険ってのは本を読む行為そのもの。面白い物語を読んで『心の冒険』をしてほしい、というメッセージです」と北方さん。編集委員はほかに逢坂剛さん(71)、大沢在昌さん(59)、夢枕獏さん(64)、先月71歳で亡くなった船戸与一さん。エンターテインメント小説界を牽引(けんいん)してきた大御所5人が昨今の読書離れへの危機感を共有しながら編んだ作品集でもある。

 「文学全集って普通しゃちほこ張ってるでしょ? そんなの一切関係なくね、物語の面白さだけを追求した。登場人物に感情移入できて心が震えて、涙がぽろぽろ落ちてくる…というのが小説の魅力。天下国家を論じる『大説』じゃあないんだから。『小説が読まれない』と言われる今こそ、その面白さを提示するのが大事だと思ったんだよ」

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