話の肖像画

映画字幕翻訳者・戸田奈津子(2)「コッポラ監督は恩人」「日本語が貧しくなっている」

フランシス・フォード・コッポラ監督(左)と(『KEEP ON DREAMING』双葉社から)
フランシス・フォード・コッポラ監督(左)と(『KEEP ON DREAMING』双葉社から)

 〈字幕翻訳者への道をあきらめきれなかった戸田さんに字幕翻訳者として認められるきっかけを与えてくれたのはフランシス・フォード・コッポラ監督だった〉

 大学を卒業して就職した生命保険会社を辞めた後、しばらくはプータローでした。翻訳のアルバイトがあったので生活には困りませんでしたね。そのうち、字幕翻訳者の清水俊二先生に頼まれてシナリオの到着が遅れている映画のヒアリングをするようになって、洋画界とのつながりができ、配給会社からもお仕事が来るようになりました。先生から字幕のお仕事をいただいたことは一度もありませんが、先生がいなかったらキャリア的にも技術的にもずいぶん戸惑っていたと思います。恩人ですね。

 もう一人の恩人はコッポラ監督です。仕事をいただいていた洋画配給会社から『地獄の黙示録』(昭和54年)を撮影中の監督のガイド兼通訳を依頼されたんです。泥沼化していたベトナム戦争を描く超話題作だったんですが、新人の私が字幕翻訳者に抜擢(ばってき)されました。後になって知りましたが、監督が「彼女は撮影現場でずっと私の話を聞いていたから、字幕をやらせてみてはどうか」と言ってくださったそうです。これを境に仕事が舞い込むようになりました。

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