光学顕微鏡の技術を使い、生物の細胞内部を生のまま観察することにより、生命現象に伴う構造の変化や物質の動きを、ナノ(10億分の1)メートルという超微細なレベルで知ることができるようになってきた。生命科学の研究がゲノム(遺伝情報)のデータにより分子レベルで解析されるようになる一方で、実際にどのような変化が起きているのかを見極め、新たに詳細で具体的なデータを得る必要がでてきたからだ。
クローズアップされているのは、2014年のノーベル化学賞の受賞対象にもなった超解像顕微鏡技術。蛍光を発する物質を使い、可視光で見る限界(回折限界)とされた200ナノメートル離れた物質を見分ける解像度もクリアできる。例えば、細胞内の呼吸に関わるミトコンドリアなど小器官の内部のようすまでわかる。電子(電子線)を当てる電子顕微鏡では原子のレベルまでわかるものの生の動く状態の細胞を見ることはできない。
こうした超解像顕微鏡技術の性能を高める蛍光タンパク質「コヒノール」の開発に大阪大学産業科学研究所の永井健治教授、同大学院工学研究科の藤田克昌准教授らの研究チームが成功した。