映画と生きる

最高の音響空間で臨場感あふれる体験を 東京・立川シネマシティの「極音上映」…ユーミン、ドリカムの担当が調整

 増さんは、杉良太郎や松任谷由実、DREAMS COME TRUEなどのコンサートの音響デザインに、新国立劇場、大阪厚生年金会館、表参道ヒルズといった施設のチューニングを手がけている。映画館の仕事はほとんどやったことがなかったが、舞台音響とそれほど異なるわけではなく、同じ感覚でできるのではないかと思ったという。

 「ただ映画はパッケージできちんとつくられているから、いじれる場所はさほど多くはない。コンサートだったらマイクロホン1本1本を調整できるが、映画はここを変えたいなと思っても無理だということが多い。その制約の中で、どれだけこの空間にマッチさせることができるかを探っていく作業になります」と増さんは話す。

 だいたい2時間の映画だと、作業時間もそれくらいはかかる。増さんは客席に陣取り、映写した作品の音をチェックしながら映写室にいるスタッフと連絡を取って調整していく。事前に映画の内容を知っていたとしても、実際にこの空間でどのように聞こえるかが大事で、やはり最後まで確認する必要があるのだ。「音の環境で言うと、空間が変われば同じ音を流しても違ってくる。ここでつくったら、どんないい音でもここにしかないんです」

 最近はドルビーアトモスなど新技術による音響開発が進んでいるが、劇場空間に合わせて調整を変えている映画館は恐らくここだけだろうという。「映画は当然、映像が主だから、いい映画だったと思われるのが一番です。ただライブの映像なら実際に会場にいるように感じてもらえたらうれしいし、さらにライブ以上に身近に感じるということになればもっといいでしょうね」。そう話すと、増さんは深夜の作業に取りかかるべく、aスタジオへと入っていった。(藤井克郎)