世界はなぜ「壁の時代」を迎えたのか。パリ第2大学付属「トゥシディダ・センター」(国際関係分析研究所)のアレクサンドラ・ノボスロフ研究員に聞いた。
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「ベルリンの壁」崩壊当時に比べると、世界で「壁」は確実に増えており、古い物を含め約20カ所にある。
壁には2種類ある。1つは国境紛争や戦争に伴う軍事目的で建設されたもの。北朝鮮と韓国の間(の軍事境界線)、インドとパキスタンが領有権を争うカシミール地方の防壁などだ。一方、米中枢同時テロ後は移民やテロリストの流入など多様な脅威の排除を目的とした壁が増えてきた。
また、中国などによるインターネット規制なども、目には見えないものの、情報の出入りの制限を通じて人を管理するという点で、「壁」と同じ原理を持つといえるだろう。
壁が増えた背景には2つの動きがある。人や物の移動、情報のやりとりの自由化をもたらしたグローバル化と世界の「細分化」だ。
グローバル化は世界の発展に不可欠であり、後戻りは不可能だ。だが、その意義を理解できず対応できない者は、「自分は何者か」という意識が脅かされていると感じる。その結果、他者との境界を明確化して自身の領域を再構築し、その中に閉じこもろうとする傾向が世界的に強まった。