日本の議論

性犯罪者の「認知の歪み」 刑罰より「処遇プログラム」で正す

 さいたま地裁で3月、女性用下着の窃盗を繰り返した埼玉県在住の大学院生の男性被告(31)の公判で、検察側が「懲役1年6月、保護観察付き執行猶予」を求刑し、同執行猶予3年の判決が言い渡された。検察側が保護観察付き執行猶予を求刑するのは珍しいとされるが、これは性犯罪者が保護観察所で「性犯罪者処遇プログラム」を受講することによって、更生と再犯防止を目指すことが狙いだ。逮捕や裁判だけが注目されがちな事件で、性犯罪者のその後を支えようとする同プログラムはどのような内容なのだろうか。(さいたま総局 菅野真沙美)

地検と保護観察所が連携

 被告は逮捕前に下着窃盗を繰り返した上、逮捕後に釈放されていた期間にも犯行を続けていた。家族と同居していたが、家族にばれることを防ぎながら犯行を繰り返していたことなどから、地検は論告で「家族による監督にも多くを期待することはできない」と指摘。「同種再犯を防止するため、社会内で更生させる間、性犯罪者処遇プログラムの受講を含む、公的機関による指導・監督に服させることが必要不可欠」とした。

 地検によると、保護観察付き執行猶予の求刑を検討する場合、保護観察所に被告の略歴や事件の概要などが伝達され、専門的知識を持った保護観察官の意見を踏まえた上で判断が行われる。今回も同様の調整が行われ、被告に対しては保護観察所での指導が行われるのが適切とされた。

「性犯罪者処遇プログラム」とは

 保護観察対象になった者のうち、犯罪の原因や動機が性的欲求に基づく者に対しては「性犯罪者処遇プログラム」の受講が義務づけられる。このプログラムは、平成16年11月に奈良で発生した女児誘拐殺害事件以降、性犯罪者の再犯防止策の充実を求める声が高まったのをきっかけに、18年から全国の保護観察所で導入された。

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