三洋電機の全社員が4月1日付で親会社のパナソニックに転籍した。製品のアフターサービスなどのため、三洋の登記上の法人格は当面存続するが、パナソニックが平成21(2009)年、経営不振に陥っていた三洋を買収して以降、両社の一体化が実質的に完了した。リーマンショック後の金融危機と景気低迷を前に三洋の佐野精一郎社長(当時、現パナソニック常任監査役)は「最優先は事業と雇用」と自立再建を断念したが、主要事業はすでに本体に吸収、もしくは売却され、とうとう社員もいなくなった。(松岡達郎)
社員10万人→0.7万人…さらに「重要なお知らせ」
「発表の一週間前、旧S(三洋)に重要なお知らせがあると説明会の案内があったんです」
三洋からパナソニックに出向しているベテラン社員は、こう打ち明ける。
その社員は仕事の都合で説明会に出席できなかったが、昨年11月28日に三洋の全社員7千人をパナソニックに転籍し、給与体系と評価制度を一本化すると発表されたと聞き、「これだったのか」と思ったという。
パナソニックは三洋を買収した後、23年には完全子会社化した。三洋と同時期に完全子会社となった旧パナソニック電工はパナソニックと給与体系が似ていたため、24年1月に吸収合併を完了。一方、給与水準が低い三洋を転籍させると人件費が膨らむため、パナソニックで働く場合も出向扱いにとどめ、「三洋が救済される形で買収されたとはいえ、同じ職場、仕事で給与に差がでるのは説明がつかないのでは」(関係者)との声があった。