ものづくりに魅せられて52年(上)

「勉強が苦手でトヨタ養成校に一か八かで受験。技を盗んで仕事を覚えた」トヨタ初の技能出身役員・河合満氏に聞く

 鍛造部のラインに完成品が入った箱が1つありました。それまでは、完成した箱を2つまとめてリフトで運んでいたんですが、鈴村さんは「何で置いとくんだ、完成したやつを」と怒るわけです。そこに表れたのが張さんです。張さんは「何で怒られたか分かるか」と言って、こう説明してくださいました。

 「物はお客に渡らないと無駄だよ。そこに停滞してるだけなら無駄だよ。お店があってもお客さんが買いにきたときに商品がなければ、帰っちゃうでしょう。だから、できた物は素早く店に出す。2箱(完成するのを)待つのではなく、1箱できたら1箱出す」

 鈴村さんや張さんのように、トヨタ生産方式にこだわりを持って粘り強く徹底的に取り組む人がいた。そうしないと、会社の風土が定着しないということを目の当たりにしました。

「ジャスト・イン・タイム」のポリシー

 《初めて買った車はトヨタのセダン「コロナ」の中古車。以降、乗り手と作り手の双方向から自動車の進化を見てきた》

 18歳になって中古のコロナを買いました。なかなかヒーターは効かないし、クーラーはありませんでしたが、雨にぬれずにすむので最高でした。

 それ以降、トヨタの車にはたくさん乗りました。新しい車が出れば買って、レクサスもクラウンもセルシオにも乗りました。私が望んでいた車がことごとく会社のなかから誕生したことは、本当にすごいことだと思います。52年間で会社も大きくなりましたが、車もこんなに進化したんだと思っています。