歴史戦 第10部・終わらぬプロパガンダ(6)

「南京事件」広めた本 著者の豪人記者は中国からカネ貰って執筆した…そんな本が「百人斬り」脚色、裁判をも影響

 国際宣伝処長だった曽虚白は、自伝で次のように記している。

 「われわれは漢口で秘密裏にティンパリーと長時間協議し国際宣伝処の初期の海外宣伝計画を決定した」

 「目下の国際宣伝では中国人は絶対に顔を出すべきでなく、国際友人を探して代弁者になってもらわなければならないと決めた」

信憑(しんぴょう)性を疑問視

 ティンパリーは38年6月、『戦争とは何か』を英国で出版した。同書の執筆の経緯はどうだったのか。曽は自伝で次のように記した。「手始めに、金を使ってティンパリーに依頼し、南京大虐殺の目撃記録として本を書いてもらい発行することを決めた」

 曽の述懐の通りであれば同書は第三者の外国人ジャーナリストとしての客観的立場からではなく、国際宣伝処の意向を受けて執筆されたことになる。

 これに対して、一部の中国人学者らは約50年が経過した段階での、曽の回想の信憑性を疑問視する。学者らは南京の公文書館にあるとされる史料などを根拠に、「ティンパリーが書き上げた原稿を国際宣伝処が買い取って発行した」と主張する。

 もっとも、米コーネル大所蔵のマクヒュー報告書が示したように、ティンパリーは同書執筆前の段階で、すでに中立的ではなかったことは明白だ。