ノンフィクション作家、門田隆将さんの「裁判官が日本を滅ぼす」(新潮文庫)は警世の書である。門田さんは、日本の裁判官が重視するのは「要件事実」だけで「事情」には踏み込まない。ために、とんでもない判決を出してしまう-と言う。「とんでもない判決」にまた1例が加わった。
▶福井地裁の樋口英明裁判長が関西電力高浜3、4号機の再稼働差し止めを命じる仮処分を決定した。理由は原子力規制委の新規制基準を否定した部分にある。「基準には、適合していれば万が一にも深刻な災害が起きないという厳格さが求められる」。100%の安全性、ゼロリスクでなければいけないというのだ。
▶非現実的ではないか。100%、あるいはゼロは科学的ではない。だからあらゆる危険性を想定し、安全対策に手を尽くす。そうした議論を無視し、エネルギー事情も考慮しなかった。申立人や一部のマスコミは「司法は生きていた」とヒーロー扱いだが、そうだろうか。