正論

中露「蜜月」戦術に惑わされるな 北海道大学名誉教授・木村汎

 歴史的典型は、「ポチョムキン村」である。エカテリーナ女帝のご機嫌を損ねまいとして、忠臣ポチョムキンは女帝が行幸(ぎょうこう)する道路沿いの外装部分だけを前もって飾り立て、あたかも街全体が繁栄しているかのような印象をつくりだそうと試みた。この故事から転じて、「ポチョムキン村」とは外見上は美しく壮大にすら映るものの、中身は空っぽという意味で用いられる。

 もっとも政治の世界で「パカズーハ」戦術は当然といえないこともない。なぜなら政治とは結局、己にとり好都合なイメージを相手に形成させようとして争うゲームに他ならないからである。

 そのような「見せかけ」合戦は、例えば日露間でも盛んにおこなわれている。安倍首相は、プーチン大統領との間でさも個人的な信頼関係が構築されている「かのように」振る舞う。大統領も負けずに日露関係が総合的に進展すれば、日本側が希望する領土問題解決への環境が整備される「かのように」示唆する。両首脳は、中露首脳同様、狐(きつね)と狸(たぬき)の化かし合いを実践中と評してよい。