「日本一の清流」である熊本県五木村の川辺川に架かる銀杏(いちょう)橋(高さ77メートル)に、命綱をつけ橋から川へ飛ぶ「ブリッジバンジージャンプ」が開業した。ブリッジバンジージャンプが楽しめる施設は西日本初で、通年営業は全国初。川辺川ダム建設が中止された同村は、水没予定地だったこの場所を地域活性化のジャンプ台にしたい考えだ。(谷田智恒)
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熊本県南部の五木村は、約1200人が暮らす静かな山間の村だ。♪おどま盆ぎり盆ぎり-の歌詞で知られる民謡「五木の子守歌」を生んだ「子守歌の里」として知られる。
球磨川の支流、川辺川では国が昭和41年、九州最大級のダム建設計画を打ち出した。しかし、「清流が失われる」「無駄な公共事業だ」との批判が高まり、長期間にわたる未着工の末、平成21年9月、前原誠司国土交通相が建設中止を明言した。すでに2千億円以上が用地買収に支払われ、水没予定だった村中心部は高台に移転した後だった。村は半世紀近く翻弄されてきたといえる。
村は、水没予定だったエリア(約20ヘクタール)の活用に取り組んだ。川辺川は、国交省の調査で19年度から8年連続で「水質日本一」となった清流。この特長を生かし、自然豊かな運動公園「五木源(ごきげん)パーク」を整備した。
そして次に、ブリッジバンジージャンプに目を付けた。ゴム製の命綱を足に取り付け、橋の上から川に向かって飛ぶアウトドアレジャーだ。
24年8月と25年3月、期間限定で試験的に営業。県のPRキャラクター「くまモン」も飛んだことで話題を集め、20日間で775人が参加し、好評だった。これを受け、今春から通年営業を行うことになった。
運営を担う「スタンダードムーブ」社のスタッフ、デイビッド・ホーロデズニー氏(45)は「日差しでキラキラと光り輝くエメラルド色の清流に向かって飛び出す爽快感は格別。アクション映画『007ゴールデンアイ』で主人公のジェームズ・ボンドが、スイスのダムを舞台に繰り広げたバンジージャンプシーンも彷彿(ほうふつ)させる。スリル満点です」とアピールする。
年間の集客目標は4千人。同村ふるさと振興課の中村潤氏は「村を挙げてアウトドアスポーツに力を入れている。バンジーだけでなく、川辺川でのカヤックやトレッキングなどと色々な組み合わせができれば盛り上がる」と意気込む。
バンジージャンプ場は現在、銀杏橋に設けられているが、夏ごろに完成する小八重(こばえ)橋(高さ66メートル)に場所を移す。利用できるのは15歳以上で、料金は1万2千円。木、金曜が定休。問い合わせは予約センター(電)0278・72・8133。