将棋電王戦

若手の精鋭起用が奏功 事前研究で癖把握、弱点突く

 2年連続で棋士が惨敗した電王戦。団体戦最後の決戦は棋士が意地とプライドを見せた格好だ。

 阿久津八段は事前の研究で、ソフトに「角」を打たせる展開に誘導すると、その後に「馬」となった角を捕獲できる可能性が高い、という弱点を発見していた。その作戦が見事に成功。「AWAKE」開発者の巨瀬(こせ)亮一さんは「(ソフトの弱点を突かれたら)早めに投了しようと思っていた」と無念の表情。

 過去2回の大敗から日本将棋連盟は今回、コンピューターの扱いに慣れ勝率の高い若手精鋭を選抜。5人は本番で対局するのと同じソフトを与えられ、研究と練習対局を重ねてきた。

 その周到な作戦が奏功したのか、初戦の斎藤慎太郎五段は、中盤までに優位を築くとソフトの反撃を許さず快勝。第2局では、ソフトが王手を防がず別の手を指し「王手放置」で反則負けするハプニングも。対戦した永瀬拓矢六段は、事前の練習でソフトの欠陥に気付き、あえて反則を誘う手を指したのだ。

 阿久津八段が勝った戦術も実は、アマチュアを対象に100万円の賞金を懸けて「AWAKE」と対戦する企画で、唯一アマが勝ったときに使われた戦法だった。

 「コンピューターとの対戦も3度目になり経験を積むことでソフトの癖や弱点が分かってきた」。コンピューターに詳しい勝又清和六段は今回の勝因をこう分析。日本将棋連盟のモバイル編集長、遠山雄亮五段も「ソフトが強いということを認識し、心構えができていたからこそ」と話している。

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