小学校の校庭から蹴り出されたサッカーボールをよけようとして転倒した後に死亡した男性の遺族が、ボールを蹴った当時小学生の元少年(23)の両親に損害賠償を求めた訴訟の上告審判決が9日、最高裁第1小法廷(山浦善樹裁判長)であった。同小法廷は、「子供の行為が及ぼした被害に対する予見可能性の有無で、親らが監督義務を尽くしたかどうかを線引きできる」とする初めての判断を示した。
その上で、「両親は被害を予測できなかった」として、両親に賠償を命じた2審大阪高裁判決を破棄、遺族側の逆転敗訴を言い渡した。4人の裁判官全員一致の意見。
子供の行為と死亡の因果関係に争いはなく、両親が監督義務を尽くしていたかが争点。民法では、子供の行為で被害が生じた場合、親らが監督義務を尽くしていなければ子供に代わり賠償責任を負うと規定している。ただ、過去の訴訟では因果関係が認められた場合、「被害者救済」の観点から無条件に親に賠償を命じてきた。今回の判決は、子供や認知症で責任能力がない老人を世話する家族に対する賠償責任のあり方に影響が大きいとみられる。
同小法廷は、今回の子供の行為について「ゴールに向かってボールを蹴る通常の行為で、道路に向けて蹴ったなどの事情はうかがわれない」と指摘。両親が普通のしつけをしていたことなども考慮し、今回の事故を「予測できたとはいえない」として、監督義務を尽くしており、賠償責任は負わないと判断した。