英作家ジェフリー・アーチャーの最新作「クリフトン年代記第4部 追風(おいて)に帆を上げよ」(新潮文庫)に、ソニーの創業者、盛田昭夫さんが実名で登場する。銀行家のインタビュー写真にソニーのトランジスタ・ラジオが写っていたことから、訪英した盛田さんがその銀行に融資を申し込むという場面である。
▶アーチャーは生前の盛田さんと親交があったのだろうか。英国の文化や習慣にも精通した国際人で、非の打ち所がない紳士として描かれているのがうれしい。舞台設定は1959(昭和34)年。戦争の記憶が残り、日本人との取引に嫌悪の表情も見える重役会で、銀行家はこう発言する。
▶「15年後を考えてもらいたい。依然として古い偏見に囚(とら)われ、それを隠そうともしていないだろうか。あるいは、前に進んで新たな秩序を認め、もはや過去を糾弾されるべきでない新世代日本人が存在することを受け入れているだろうか?」。戦後70年。中国や韓国で読んでほしい一節である。