国際結婚の破綻などで、一方の親に国境を越えて無断で連れ去られた子供の扱いを定めたハーグ条約が日本で発効して1年が経過した。
この間、外務省が受け付けた子供の返還や面会を求める申請は100件を超えた。いまのところ大きな混乱もなく対処されている。
ただ、日本では親権制度の違いなどから加盟に慎重論を唱えた経緯があった。家庭の問題がからみ返還の可否を決める裁判なども原則非公開で行われるため、課題がみえにくい。引き続き子供を保護する条約の目的にかなうよう、注意深い運用を求めたい。
条約加盟国は、16歳未満の子供を一方の親が無断で国外に連れ去った場合、子供を捜し、元の居住国に戻す義務を負う。親の国籍を問わず、どちらが養育するかなどは、元の居住国で決められる。
この1年間の申請のうち、子供の返還を求めたものは44件で、親同士の合意に基づいた外国への返還が3件、日本への返還は裁判所の命令などで4件実現した。その他、裁判所での審理に入ったものもあり、そのすべてが子供の利益に結びつくのか、必ずしも楽観はできまい。