日本の議論

「医薬分業」誰のため 「院外処方」で患者負担が増している不道理

 それでも、日本薬剤師会などは「この処方はおかしいのではないか」と医者に疑義を訴え、処方を変更させたり、安価な後発医薬品に切り替えたりするなど、薬局は専門性を生かして国民に安心して薬を供給できる役割を果たしていると主張する。

 だが、厚労省などが医薬分業の理想に描いた「かかりつけ薬局」にはほど遠い。政府は高齢者が地域で医療や介護などを受けながら、住み続けられるようにする「地域包括ケア」システムを目指している。

 その中で、医療用医薬品を中心に扱う薬局は「処方箋なし」で購入できる胃腸薬など大衆薬の扱いを増やすとともに、適切な服薬支援を含めた生活習慣全般に関して相談を受ける「健康情報拠点」としての役割を目指しているが、現実は違う。

 「建前論だけに終始しても患者にメリットはない。実態に即していない」

 門前薬局が乱立した誤算に触れず、医薬分業のメリットばかりを主張する厚労省に対し、規制改革会議の委員は討論会でこう指摘した。分業推進で生じた院内外の価格差を放置し、負担増に伴う十分なサービスも享受できていない現状は、患者側にしてみれば納得できないだろう。

(政治部 岡田浩明)

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