安倍晋三首相は、5月9日にモスクワで開かれる対独戦勝70周年記念式典について、ロシアの招待を断り、出席を見送る方向で調整に入った。政府関係者が29日、明らかにした。当時のソ連が70年前に日ソ中立条約を一方的に破棄して北方四島を不法占拠し、今も不法占拠が続いている上、約60万人とされる日本人のシベリア抑留問題も未解決であることを踏まえ、欠席するのが妥当との判断に傾いた。
対独戦勝70周年記念式典については、ロシア政府から昨年、安倍首相宛ての招待状が届いた。
10年前の対独戦勝60周年記念式典は、第二次大戦の戦勝国と敗戦国の首脳が「追悼と和解」の旗の下に参集し、小泉純一郎首相やブッシュ米大統領、胡錦濤中国国家主席、独ソ戦の当事国であるドイツのシュレーダー首相(いずれも当時)らが出席した。
今回の式典については、安倍首相が出席すれば、ロシアとの間で合意されているプーチン大統領の年内来日実現に向け首脳同士が対話する好機との見方もあった。しかし、首相が出席すれば「歴史の清算」なしに「和解」になびくとの印象を世界に与えかねず、得策ではないとの判断が働いた。「日本は式典のメーンプレーヤーではない」(外務省幹部)との事情もある。