東日本歴史事件簿

小石川7人斬り(下)「インバネスコート」と「懐中時計」でアシ 元同房男の手引きで犯行…「死刑」に顔面蒼白

【東日本歴史事件簿】小石川7人斬り(下)「インバネスコート」と「懐中時計」でアシ 元同房男の手引きで犯行…「死刑」に顔面蒼白
【東日本歴史事件簿】小石川7人斬り(下)「インバネスコート」と「懐中時計」でアシ 元同房男の手引きで犯行…「死刑」に顔面蒼白
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 大正4年3月15日、東京・小石川の東京電燈(東京電力の前身)小石川出張所で就寝していた8人のうち子供を除く7人が切りつけられた事件。ほとんど事件は迷宮入りとなった感があり、警察も容疑者を捕まえては本人を取り調べるというよりも、誰か関係のありそうな参考人はいないかを引致する目的で話を聞く始末。富坂署では、17日に千葉・成田で逮捕した平田安蔵らに聞いた有力容疑者2人を留置したが、どうも事件解決には結びつきそうにない様子だ。

 出張所の主任、奈木定行夫妻の娘で唯一刃物の禍を免れた、くに(4)は事件後、小石川区竹早町にある清水商店に預けられた。毎日思い出しては父母を呼び、近所の人たちの涙を誘っているが、18日には篤志者から小包でおもちゃが送られた。「牛込の同情者より。国子さんのことを思い出すたび同情の涙が止まらない」などという手紙も添えられていた。

 犯人の目星もつかない中、とうとう19日、奈木定行の妻、熊(24)が治療のかいなく死亡した。

凶器はインバネスコートを着た男が購入

 犯行現場で見つかった凶器は、小石川上富坂にある中村商店で販売されたことが分かった。調べでは、14日夕刻に40歳ほどのインバネスコート(当時日本で流行した二重回しとも呼ばれるコート)を着た田舎っぽい男が来て、15銭の玄能(げんのう)と70銭のオノを80銭に値切って買っていった。それを聞くや、刑事たちは色めきだち、素人ではなく前科者だろうと見立て、墨田区本所方面に出動した。

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