海外事業加速へ36歳若返り 久光製薬社長に中富一栄氏

中冨一栄氏
中冨一栄氏

 久光製薬(佐賀県鳥栖市)のトップが、中冨博隆氏(78)から、長男で副社長の中冨一栄氏(42)に交代する。博隆氏は医療機関で使われる医薬品事業を拡大し、同社を中堅の製薬会社に育て上げた。同社は34年ぶりのバトンタッチで、海外事業の加速をはじめ、さらなる成長を図る。

 博隆氏は昭和56年、先代社長で父の正義氏の後を継ぎ、社長に就任した。

 正義氏は貼付剤「サロンパス」(昭和9年発売)の生みの親だが、博隆氏は看板商品に頼り切ることはなかった。サロンパスの販売拡大に加え、医療機関で処方される「医療用医薬品」事業に着手し、新たな看板商品に成長させた。

 医療用医薬品の代表が、腰痛や関節リウマチなどの患者に処方される鎮痛消炎貼付剤「モーラステープ」(平成7年発売)だ。サロンパスで培った、皮膚から体内に薬を送り込む技術を活用した商品であり、久光製薬は販路を、薬局から医療機関へと拡大した。

 久光製薬の年間売上高は、博隆氏が社長となった昭和56年度の130億円から、平成25年度は1506億円と、10倍以上になった。

 ビジネスばかりではない。博隆氏は、正義氏が鳥栖工場のクラブ活動として始めたバレーボール部強化にも努めた。平成6年にはVリーグに参加し、以降、4回の優勝を果たす強豪チームとなった。また、女子プロゴルフツアー公式戦を特別協賛するなど、スポーツ振興への貢献も大きい。

 久光製薬は昨年5月に発表した中期経営方針で、平成30年度の売上高目標を1900億円に設定した。達成に向け、アジアや北米で営業・生産を強化する。現在、海外での売り上げの比重は3割弱だが、これを引き上げる。

 一栄氏は、平成21年に子会社化した医薬品研究開発の米国ノーベン社の会長を昨年まで務めた経験もある。42歳の新社長にとっては、海外競争力の強化が、トップとしての試金石となる。

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