原爆文学資料の世界記憶遺産登録に向けて活動している市民団体「広島文学資料保全の会」(広島市中区、土屋時子代表)が、登録への支援の輪を広げるためポストカードを作製したところ、2月中旬からの販売で用意した1000部の半分が売れるなど、国内外から多くの支援や賛同が寄せられている。
同会は昨年6月、峠三吉の「原爆詩集」の直筆最終草稿、栗原貞子の「生ましめんかな」の直筆ノート、原民喜の小説「夏の花」の執筆のもとになった原爆被災時のノートの3点を記憶遺産に登録するための活動を発表し、現在、国内選考通過を目指している。
ただ、登録に向けた運動には、交通費や宿泊費などの経費が必要。現在、会のメンバーは約70人だが、会費はとっておらず、カンパなどで賄っている。こうした背景から、記憶遺産登録に向けて、さらなる周知を図り支援の輪を広げようと、「送る人と届く人にも知ってもらえる手軽な方法」としてポストカードに着目した。
ポストカードは1セット300円で3枚セット、カラー版で1000部作製した。登録を申請する3人の作品と説明文を掲載したほか、記憶遺産登録に向けた発表時の新聞記事や、同会の活動内容を記した文書も同封し、賛同や資金援助を呼びかけている。
2月中旬に完成し、これまで、同会が自費出版した冊子の購入者など関係者を中心に呼びかけたところ、すでに県内や千葉、長崎県といった全国各地から購入者が集まり、多くの支援が集まっている。
同会によると、日を重ねるごとに賛同人が増えており、ピュリツァー賞受賞者の米国の歴史学者、ジョン・ダワー氏からも賛同が寄せられた。ダワー氏は「原爆の残虐さ、人々の悲嘆、未来への警告と希望を比類ない感動的な言葉で伝える3人の作品」と評価した上で、「保存し、世界中で活用させることは広島と長崎が記憶の隅に退いた現在の私たちの責務」などとメッセージが送られたという。
同会の池田正彦事務局長は「運動を理解してもらい、うれしく思う。良い流れができて登録の追い風になれば」と意気込んでいる。