湯浅博の世界読解

穏やか口調で南沙を盗る中国

南シナ海の沿岸国に威嚇を繰り返してきた中国の口調が、穏やかに変化している。東南アジアの沿岸国が、排他的経済水域(EEZ)で違法操業した中国漁民を拘束しても、その批判がこれまでになく抑制的なのだ。

力の行使を控えつつ、ひそやかにスプラトリー(南沙)諸島の岩礁を埋め立て、人工島に造り替えていく。ヒューズ礁にはヘリポート、ファイアリークロス礁では滑走路を造成しつつある。そして、沿岸国との摩擦をひたすら回避する。

「でっかい棍(こん)棒(ぼう)を手に持っていれば、穏やかな口調でも言い分は通る」と考えているのだろう。これは20世紀初頭の米国で、セオドア・ルーズベルト大統領が、欧州諸国が西半球に介入すれば拒否するとの姿勢を示したときの言葉だ。

漁民逮捕でも「控えめ」

具体例を挙げよう。フィリピンの裁判所が昨年11月、EEZ内で不法操業した中国漁民9人に有罪判決を言い渡した。そのハーフムーン礁付近は、中国が一方的に領海だという「9段線」と重複しており、逮捕時に漁民の解放を求めたものの、どこまでも「穏やかな口調」であった。