長野県が第3次地震被害想定 糸静構造線で死者最大7000人以上予測

 県防災会議は6日、県庁で会合を開き、県内でマグニチュード(M)7~9クラスの巨大地震が発生した場合について、人や建物などの被害予測を算出した第3次地震被害想定を発表した。東日本大震災を教訓に、これまで想定していなかった地震や、甚大な被害が懸念される南海トラフを震源域とする巨大地震を加えた11の地震の発生を想定し、被害を算出した。今回の想定は「科学的に考え得る最大級の内陸型地震」として、糸魚川-静岡構造線断層帯の全体が動いた場合の地震を新たに加えたのが特徴。この地震では最大で死者が7千人以上、負傷者も3万7千人を超え、建物の全壊・焼失は10万棟近くに達するという甚大な被害の発生を予測している。

 ◆11の被害想定

 県の地震被害想定は、昭和60、61年度に第1次、平成12、13年度に第2次を実施。第3次想定は25年度から2年間をかけ、信州大工学部の泉谷恭男教授を委員長に地震工学、地質学、防災などの専門家7人で構成する検討委員会が検討作業を行った。地盤や地質など地震被害に関連するさまざまなデータに加え、積雪の状況や観光客の入り込み状況なども考慮し、県内全域の被害想定を算出した。

 対象となる地震は、内陸型(活断層型)地震が糸魚川-静岡構造線断層帯・全体▽同・北側(牛伏寺断層含む)▽同・南側▽長野盆地西縁断層帯▽伊那谷断層帯▽阿寺断層帯▽木曽山脈西縁断層帯▽境峠・神谷断層帯-の8つ。海溝型地震が東海地震▽南海トラフ巨大地震・基本ケース▽同・陸側ケース-の3つ。

 いずれも、暖房器具を多く使う季節や調理が集中する時間帯、風速などによって、火災発生などのリスクの大小を織り込んだ上で、それぞれの条件に応じた被害を算定した。

 ◆糸静断層帯

 最大の被害が予測される糸魚川-静岡構造線断層帯全体が動く地震では、長野市や松本市、上田市、岡谷市など断層帯に沿った21市町村で、震度7の激しい揺れを予測。6強も6市町村、6弱は17市町村で観測されると見込む。

 それぞれの条件によって、死者は5570~7060人、負傷者は3万1160~3万7760人と予測。建物の全壊・焼失は8万2750~9万7940棟、半壊は10万3450~10万9620棟の被害を想定している。ライフラインへの被害(最大時)では、上水道の断水が被災直後に県人口の69%にあたる145万3310人に影響。停電も70万570世帯に達する可能性がある。

 さらに自宅の損壊やライフラインの停止などによって、避難所などに避難する人の数は被災2日後の時点で最大36万7540人に達すると予測する。また、避難所での高齢者や障害者などの災害時要配慮者は最大で3万6560人で、食料や飲料水などの備蓄は、被災1日目から不足が発生。道路の寸断などによって生じる孤立集落は566集落と見込む。

 一方、同断層帯の北側が動いた場合は、死者710~790人、建物の全壊・焼失1万570~1万1770棟と想定。南側が震源域となる場合は、死者1940~2100人、全壊・焼失2万7650~3万1180棟と算出した。

 ◆南海トラフ

 M9の巨大な南海トラフ地震は、陸側で強震動が発生した場合に被害が最も大きくなる。県南部から中部の広い範囲で震度5強以上の強い揺れが予測され、6強は飯田市や伊那市などの4市町村。また、駒ケ根市や諏訪市など30市町村で6弱、北部の長野市や千曲市でも震度5強の揺れが発生するとしている。

 この結果、死者は130~180人、負傷者は3330~4440人に達し、建物の全壊・焼失は2230~2260棟、半壊は2万420~2万450棟と見込む。ライフラインなどへの被害は最大で上下水道の断水が70万1780人に影響し、停電は33万3620世帯で発生。避難所などへの避難者は5万9690人に上り、135の集落が孤立する。

 同じ南海トラフ地震でも、発生が陸側ではなく、中央防災会議が検討する東海地震、東南海・南海地震を参考に設定した基本ケースでの県内の被害は、死者20~40人、全壊・焼失190棟の被害にとどまる。

 このほかの地震被害の想定は、東海地震=死者10~20人、全壊・焼失60棟▽長野盆地西縁断層帯=死者2210~2350人、全壊焼失2万9820~4万960棟▽伊那谷断層帯=死者1210~1550人、全壊・焼失1万5810~1万7540棟▽阿寺断層帯=死者10~20人、全壊・焼失140棟▽木曽山脈西縁断層帯=死者240~390人、全壊・焼失2590~2700棟▽境峠・神谷断層帯=死者160~340人、全壊・焼失2040~2050棟-となっている。

 ◆減災効果算出

 第3次被害想定は、予測される被害に対して、防災対策を行うことによって得られる減災効果を算出したのも大きな特徴だ。建物の耐震化が100%実施されれば、建物全壊棟数は糸魚川-静岡構造線断層帯(全体)の場合で被害は約10分の1、長野盆地西縁断層帯では約20分の1に被害が軽減できることが分かったとしている。

 建物の耐震化のほか、地震の揺れを感知して電気の流れを遮断する感震ブレーカーの設置によっても、電気機器や配線からの出火を大幅に軽減できる。

 県は第3次地震被害想定に合わせて、「地震被害予測システム」を開発した。将来的に地震の発生が懸念される場所だけではなく、県内のどの地点が震源となった場合でも、地震の揺れや被害を概算で算出できる仕組みで、システムに任意の震源や地震の大きさを入力すれば、どの程度の被害が発生するかが予測できる。これによって、地震が発生するとは考えられていなかった場所や規模での地震が発生した場合に備え市町村などが防災対策を検討することが可能になった。

 東日本大震災では、地震の規模が巨大だったため、発生から被害の把握までに相当の時間を要した。しかし、このシステムを使えば、発災直後で被害情報が収集できない場合でも、気象庁が発表する地震情報を入力すれば被害を予測できるため、適切な初動対応が可能になる。

 県危機管理部は「規模の大きな地震が発生した場合、通信網や交通網が遮断され、初動対応に必要な情報収集は極めて難しいが、被害予測システムを使うことで、完全に正確な被害を把握することまではできないにしても、どこで大きな被害が発生しているかを推測でき、速やかな初動対応を行うことができる」と期待している。

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