養育園傷害致死初公判

「暴行と死亡」関係争点 千葉

 ■24歳元職員、起訴内容の一部認める

 知的障害者などが入所する福祉施設「養育園」(袖ケ浦市蔵波)で平成25年、入所者の少年=当時(19)=が職員に暴行を受けた後に死亡した事件で、傷害致死の罪に問われた元職員の行方孝美被告(24)に対する裁判員裁判の初公判が4日、千葉地裁(西野吾一裁判長)で開かれた。行方被告は罪状認否で「暴行を加えたのは間違いない」と起訴内容の一部を認めた。

 起訴状によると、行方被告は25年11月24日午後、少年の腹部を数回蹴り、同26日に腹膜炎により死亡させたとしている。

 検察側は冒頭陳述で、行方被告が少年に加えた暴行が死因になったと指摘。これに対し、弁護側は事件前後に別の職員2人も少年に暴行しており、少年の死亡との因果関係は不明と主張した。行方被告の暴行と少年の死亡との因果関係が争点となる。

 事件をめぐっては、行方被告が昨年3月に本件で起訴された後、少年を含む入所者10人に17~25年にかけて暴行を加えるなどした疑いで、行方被告と元職員ら計9人が昨年4、8月に書類送検された。この容疑については、千葉地検が全員を起訴猶予や嫌疑不十分による不起訴としている。

 行方被告は公判にスーツ姿で臨んだ。当初は資料に目を通すなど落ち着いた様子だったが、証人として出廷した元同僚の男性が「暴力を振るわずに入所者を支援することはできるか」という検察側の質問に「できる」と答えると、目線を落として下唇をかむような仕草をみせる場面もあった。

 公判は集中して開かれ、判決は23日に言い渡される。

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 ◆検察側冒頭陳述要旨

 行方被告は平成25年11月24日午後3時ごろ、入浴を待っていた少年が大声を出したため、靴のつま先で腹部を数回蹴り、目撃者の職員の声かけでやめた。

 司法解剖の結果、小腸に開いた穴が少年の死因とされる。暴行を受けるまで少年に異変はなかったが、暴行後に嘔吐(おうと)をした形跡が見つかるなど体調を崩した。

 また、行方被告は事件後知人と連絡を取ったときに自分の暴行が原因と説明するなどしている。行方被告の暴行により少年の小腸に穴が開いたことが死因となるので、傷害致死罪が成立する。

 少年が亡くなったことによる遺族への影響は大きく、また、この事件を起こす以前から行方被告は入所者に対する暴行を日常的に行っており、福祉施設に対する社会的な信用を落とした。

 ◆弁護側冒頭陳述要旨

 施設では、行方被告以外にも日常的に職員らが入所者に対して暴行を加えていた。

 少年が大声を出すと他の入所者にパニックが広がるため、少年を止めるために行方被告が暴行を加えたことは間違いないが、事件当日の朝に別の職員が少年に暴行を加えている。その暴行が死因ならば、行方被告は傷害致死罪でなく暴行罪にあたる。

 また、行方被告による暴行の直後に、もう1人別の職員も少年に暴行している。犯行は行方被告による単独犯ではなく別の職員との共犯とされる。

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