衝撃事件の核心

「和歌山小5男児刺殺事件」の深い闇…精神鑑定で刑事責任の有無焦点 一回りも年下の男児になぜ

中村桜洲容疑者。両頬を膨らませる姿がしばしば見られた
中村桜洲容疑者。両頬を膨らませる姿がしばしば見られた

和歌山県紀の川市の閑静な住宅街で、小学5年生の男児が刺殺された事件。逮捕されたのは、近所に住む無職、中村桜洲(おうしゅう)容疑者(22)だった。当初は「殺していない。男の子を見たこともない」と容疑を否認していたが、「えらいことやってもうた」と関与を認める供述に一転。取り調べ中には独り言をつぶやくことも多く、犯行動機などについてはいまだに謎に包まれている。中村容疑者は2月23日から約3カ月間、事件当時の刑事責任能力を調べるための鑑定留置に入った。なぜ一回りも年下の男児を狙ったのか。

事件発生、閑静な住宅街に緊張が走る

2月5日夕、和歌山県警本部に「岩出署管内で男の子が刺されたらしい」との一報が入ってきた。すぐに同署へ電話で確認すると、対応した署幹部がいつもとは違う口調で「紀の川市の後田(しれだ)というところで子供が刺された。犯人は凶器を持ったまま逃走している。それくらいしかまだわかっていない」と答えた。電話の向こうの慌ただしさから、事態の重大さがうかがえた。

事件が発生したのは同日午後4時15分ごろ。住宅地の空き地で、近くに住む小学5年の森田都史(とし)君(11)が血を流して倒れているのを近隣住民が発見した。森田君を刺したとみられる不審な男を住民が目撃していた。

県警は岩出署に捜査本部を設置。のどかな住宅街は一転して、警察車両や報道関係者がつめかけて騒々しくなった。

森田君は同市内の病院に搬送されたが、すでに心肺停止状態で、数時間後に死亡が確認された。左胸に刺し傷があり、その深さは心臓を突き抜けていた。頭には2つの傷があり、頭がい骨も骨折。両腕にも多数の切り傷が見られたという。司法解剖の結果、死因は胸を刺されたことによる失血死と判断された。凶器については「傷の形状からみて、なたのような鋭く重みのある刃物」(捜査関係者)とされた。

未明の逮捕、状況証拠固められ関与認める

発生翌日の6日には、事件直後の目撃証言などから中村容疑者が捜査線上に浮上し、翌7日未明に殺人容疑で逮捕された。

「『私は男の子を殺していません。その男の子を見たこともない。知りません』と容疑を否認しています」

同日午前3時から岩出署で行われた緊急会見で、捜査幹部は中村容疑者の供述をこのように説明した。さらには、今年1月に中村容疑者が森田君の兄を傘を持って追いかけ回していたことも明らかにされた。

家宅捜索では、狩猟や軍隊などでも使われる殺傷能力の高い「ククリナイフ」状のものなど刃物3本が押収され、うち1本から森田君のDNA型が検出された。目撃証言にもあった作業用ゴーグルのようなものも、任意同行を求められた際に中村容疑者が所持していたという。当初は「家でテレビを見ていた」などとアリバイを主張していたが、その後外出していたことも判明した。次々と状況証拠が固められ、ついには中村容疑者も関与を認める供述を始めた。

当初から謎だったのが、森田君と中村容疑者の接点だ。近所の住民は「よくわからない」と首をかしげる。地元の同じ剣道場に通っていたというが、通っていた時期が違い、「2人が一緒にいるところは見たことがない」と他の練習生も口をそろえた。

謎を残す接点…高校進学失敗で豹変?

森田君を知る人は、「明るくて人懐っこい子」「元気でやんちゃな子」と話す。愛嬌(あいきょう)のある子供らしい子だったという。しかし、中村容疑者は逮捕後、「(森田君と)トラブルがあった」などと供述したという。

一方、中村容疑者については「人を避けている感じがした」「最近は家に引きこもりがちだった」などと近隣住民は話す。さらには、「昔は明るくて優しかった」「真面目で礼儀正しい子だった」という声も。中村容疑者が通っていた剣道場の関係者も「真面目で手も抜かず、優しくて温厚な性格だった」と話す。

昔の中村容疑者を知る人は「高校入試がうまくいかなかったことから少し引きこもりぎみになったように思う。両親が優秀でコンプレックスに思ったのかもしれない」と打ち明ける。高校受験で志望校に進学できなかったことを機に、人格が変わってしまった可能性も指摘されている。

最近では自宅の庭などで大きなゴーグルをかけて木刀を素振りする姿も目撃されており、不審に思う住民もいたという。逮捕直後には「棒とかいっぱい持っていたし、もしかしたらあの人かなと思っていた」と話す近所の住民もいた。

中村容疑者を知る昔の友人は「基本的に明るい人間だったが、変なところで怒ることがあった。冗談のつもりが本気で怒られたこともあり、根に持つタイプだった」と話す。

犯行後に凶器洗う? 刑事責任能力の有無は

この友人によると、小学校高学年のころに中村容疑者から1日10通ほどの嫌がらせメールが送られたことがあり、こうした行動を取る中村容疑者に恐怖を感じていたという。

「小学校低学年の子供に突然、傘を振りかぶってビックリさせて反応を見たりしていた。自転車の前に急に飛び出して立ちはだかって止めたり、自転車を蹴ったりしてビックリした顔をする周囲の反応を楽しんでいた」(中村容疑者の友人)

不可解な言動で近所などで噂されていた中村容疑者。任意の取り調べの際に机の上に仁王立ちしたり、独り言をつぶやいたりしていたというが、「取り調べ中の態度はいたって普通」と捜査関係者は話す。雑談などに応じているが、犯行の核心部分になると口をつぐんだという。接見した弁護人は「精神的な疾患や発達障害があるかもしれない」と話す。

しかし、凶器の刃物からは血液反応が検出されず、詳細な検査で森田君のDNA型が検出されたことから、犯行後に刃物を洗った可能性が浮上。犯行の重大性を認識していたともみられる。「精神疾患というより異常な性格と感じる」と話す捜査関係者もいる。

約3カ月の鑑定留置に入った中村容疑者。今後は、事件当時の刑事責任能力の有無が焦点になる。

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