今回はドイツの牛タン料理をご紹介いたします。
寒い日はどうしても、こってりとした料理が食べたくなりますよね。主人(故・光博氏)はドイツで修行中に食べた牛タンの煮込みが好きでした。日本でも、寒い日に来客があるときなど、よく作っておもてなしをしたものです。
主人とドイツで結婚式を挙げ、来日した約40年前は、お肉屋さんで牛タンや牛テールをタダ同然で分けていただいた覚えがあります。当時、少なくとも福岡では牛タンや牛テールを食べる人は、ほとんどいなかったのでしょう。
とても安くてありがたいなと思っていたら、だんだんと人気が出て、値段も跳ね上がりました。
さて、牛タン煮込みがおいしいドイツの冬といえば、カトリックの影響が強い南ドイツやオーストリアでは2月に「ファッシング」というカーニバルが催されます。
プロテスタントが強い北ドイツのハンブルクではファッシングを祝いませんので、私は詳しく知りません。しかし、主人はハンブルクで修業を終えた後、1965年から66年まで、「チロリアン」(千鳥屋の菓子)の故郷であるオーストリア・チロル地方でお菓子修業をしていました。
チロルの主人からの手紙によると、愉快な仲間たちと変装し、街を楽しく練り歩いたそうです。村々で違うデザインの仮面がありますが、だいたい鬼か魔女に変装する人が多いようですね。ちなみに主人はピエロに扮(ふん)したそうです。
新婚旅行でチロルを訪ねた際、例の愉快な仲間たちが当時の思い出話をしてくれました。お祭り期間中、かわいい女性を見つけたらキスをしてもよい風習があるそうで、主人は大勢の女性にキスをしていたとのこと。「それはよござんしたね」ということで、主人を思いっきり、つねってあげました。
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牛タン煮込み マデラソース(6~8人分)
【材料】
牛タン 1本(皮付き)
タマネギ 2個
ローリエ 2枚
クローブ 2、3本
ニンジン 1本
白ネギ 1本
セロリ 2本
コショウ(丸のまま) 大さじ1
塩 小さじ1
バター 1個
小麦粉 大さじ2
ポルトガル産マデラワイン 200cc程度
生クリーム 100cc程度
塩、コショウ お好みで
レモン汁 小さじ2~3
小ネギ 1束
【作り方】
(1)牛タンを水で丁寧に洗い、余分な脂肪などがあれば切り取る
(2)タマネギ1個の皮をむき、ローリエとクローブをそのタマネギにさす。人参、白ネギ、セロリを洗い、大きめに切る
(3)牛タン、タマネギ、野菜、塩、コショウを大きめの鍋に入れる。牛タンにかぶせるように水を入れ、一度わかしたら、鍋にふたをして弱火にかける。時々様子を見ながら3時間ほど煮込む。タンの皮の下に泡のようなものが見えたら、煮えたしるし
(4)タンを鍋から出し、水洗いし、皮を取りのぞき、再び鍋に戻す
【ソースの作り方】
(1)フライパンにバターを溶かし、もう1個のタマネギをみじん切りにする。フライパンで、小麦粉とともに弱火で炒める
(2)鍋の中のスープ500~700ccを裏ごしし、フライパンに加える。強火に変え、水分を飛ばしつつ、マデラワインを足し、アルコールを飛ばす
(3)最後に生クリームも加え、レモン汁と塩、コショウで味を調えればソースは完成。鍋の中からタンを出し、食べやすい厚さにカットし、ソースをかける
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付け合わせのマッシュポテト
【材料】
ジャガイモ 800~1000グラム
牛乳 100cc
生クリーム 100cc
塩、コショウ 少々
ナツメグ 少々
バター 20グラム
【作り方】
(1)洗ったジャガイモの皮をむき、水に少しつけてから15~20分ゆでる。柔らかくなったら湯を流す。もう一度、ジャガイモを鍋に戻し、中火で余分な水分を飛ばす
(2)ジャガイモを大きめのボールで潰す
(3)牛乳とバターを鍋で温め、そこに潰したジャガイモを加える
(4)ハンドミキサーでゆっくり混ぜ、マッシュポテトの出来上がり
(5)付け合わせにもう2品。グリーンピースをさっと湯がき、バターと塩で味付けする。つぼみ菜をオリーブオイルでさっと炒め、塩コショウする
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【プロフィル】原田ウルズラ
はらだ・うるずら 1951年に旧西ドイツ東部のヒルデスハイムに生まれ、ハンブルクで育つ。72年に菓子修行のために留学中だった原田光博氏(千鳥屋元会長)と結婚して来日。2008年、夫の死を受けて千鳥屋の社長に就任、11年に長男の浩司氏に社長を譲り、会長に就任した。息子3人と娘1人、孫7人。趣味は料理と茶道(遠州流)。特に梅干し作りとジャム作りにはこだわりがある。