正論

疑念払えぬ中国に油断するな 平和安全保障研究所理事長・西原正

 昨年11月に北京で行われた日中首脳会談で、両国部隊の海上における偶発的衝突を避けるために「海上連絡メカニズム」を運用開始することで同意が得られた。その後の両国間の協議で、連絡メカニズムを海域ばかりでなく空域にも広げることも合意された。

 この「海空連絡メカニズム」が機能すれば、両国関係の緊張緩和にはきわめて有益なステップとなる。連絡メカニズムが早期に実質的に機能することを期待したい。

 《「尖閣諸島」奪取への懐疑》

 しかし問題は、中国側がどの程度真面目にこの種の信頼醸成措置を順守するかである。もともと海上連絡メカニズムは2007年に安倍晋三首相と温家宝首相との合意で協議が始まったのであるが、12年9月の日本政府の尖閣諸島買い上げで中断されたものである。

 その間、中国軍ヘリの海自護衛艦への異常接近や中国艦船による護衛艦レーダー照射などがあり、日本側には対中不信が募った。

 過去1年間ぐらいを見るだけでも、東シナ海における中国の海空活動は挑発的である。13年11月には東シナ海上空に尖閣諸島上空を含む「防空識別区」を設置した。中国の狙いは、尖閣諸島への領有権を既成事実化することにある。

会員限定記事会員サービス詳細