祥瑞をつかめ 未年の戦略

福岡地所・石井歓社長(61)

 ■天神オフィスビル計画進める 商業施設、来日観光客への対応強化

 キャナルシティ博多(福岡市博多区)、マリノアシティ福岡(同市西区)といった当社の商業施設が好調です。キャナルシティでは平成25年度、24年度比で売上高が4%、来場者が5%伸びました。今年度も引き続きよいペースです。

 好調を支えているのはインバウンド(海外からの来日旅行)客です。推定ですが、キャナルシティ全館の売り上げの2割近くが外国人客ではないでしょうか。

 特に、中国からのクルーズ船で入港した団体客や、円安で復調した韓国人旅行客が多い。インバウンドの増加が、消費税増税(昨年4月)によるマイナス影響を消し飛ばした状況です。

 そこで、今年の大きなテーマは「インバウンドへの対応」ということになります。

 主な対策は3つ。まずは免税店を増やすことです。キャナルシティの(物販、飲食などの)店舗総数は254ありますが、免税店対応、あるいはパスポート提示でサービスを実施する店舗が約150あります。これをさらに拡充したい。近年は化粧品や食品が人気なので、特にそういったテナントさんには免税対応をお願いしていきます。

 また、外国クルーズ船の団体客は貸し切りバスに乗り、キャナルシティに到着します。1度に大勢が来館されるわけですが、よりスムーズに受け入れられる態勢作りを進めたい。

 3つ目は、直接的にはカード会社がやることですが、外国人客が「普通に」クレジットカードが使えるような商業施設にすること。中国で普及している「銀聯カード」に加え、韓国最大手の「新韓カード」発行のカードも昨年末に一部店舗で使えるようになりました。未対応の店でも今後使えれば、より買い物しやすい環境になります。

 インバウンドが好調なのは事実ですから、きちんと対応を考えないといけないのは当然のことですよね。しかし、(海外情勢などで)将来どうなるかわからないので、あまり浮かれてはいけません。

 キャナルシティの8割は日本人客なのだから、日本人客にとっての魅力が増す戦略を考える必要があると思っています。

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 会社全体を見ると、経営資源の6割程度を商業施設に投じているし、利益も6割程度を商業施設から得ています。

 しかし、業績を長く安定させるには、商業に比べて景気による浮き沈みが小さいオフィスビル事業を強化しなければなりません。

 その核となるプロジェクトが、福岡・天神で進めている「天神ビジネスセンター」です。

 天神セントラルプレイスなど隣接する自社のオフィスビル3棟。これに加え、隣接する福神ビルの用地も賃借し、この4棟を取り壊し、跡地(約3700平方メートル)に高機能オフィスビル1棟を建てたいと考えています。28年度の着工を目指しており、完成すれば福岡市中心部(天神・博多地区)で最大級のオフィスビルになるでしょう。

 このビルが建つ「明治通り」一帯(約17ヘクタール)では、(地権者企業などでつくる協議会による)再開発計画が進行中です。天神ビジネスセンターもその一環になる。まずは再開発計画(地区整備計画)が都市計画法に基づき決定されなければ、天神ビジネスセンターについても話になりません。再開発計画の進展をきちんと押さえながら、今年中に基本設計に入りたいと思っています。

 どういった中身になるのか、具体的には決まっていませんが、完成した時点で福岡で一番のスペック・機能のビルにしたいですね。

 天神にはこの20年ほど、大型オフィスビルがほとんど新築されていません。一方、大阪、名古屋は次々と建っています。

 東日本大震災以降、首都圏の企業が本社機能を地方に分散移転する動きがあります。福岡市ではオフィスビルの供給が足りないあまり、この需要を逃してしまうことを危惧しています。

 私はいち経営者として、自社のプロジェクトを着実に前進させるのみです。

 ですが、オフィスビルに加え、ホテルの供給も足りない、福岡空港もすでに過密状態という現状が今後何年も続くなら、地域経済が活性化するはずがない。

 「福岡市は元気だ」とおだてられているうちに元気を失ってしまう危険性もあると思います。

 需要は十分にあるはずです。天神ビジネスセンター以外にも、新しい高機能オフィスビルが建つことを期待しています。

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【プロフィル】石井歓

 いしい・かん 昭和29年、東京都生まれ。東京大卒業後、昭和52年に日本開発銀行(現・日本政策投資銀行)入行。日本政策投資銀行九州支店長、同行常務執行役員を歴任。平成22年に退職し、日本航空管財人代理を務めた後、23年8月から現職。

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