新人記者奮闘す

湯川さんの父親は堰を切ったように泣いた…テロリズムへの憤りに震えた2週間 

 「シリアでつかまっていたとみられる男性の殺害予告の映像が流れた」。そう電話があったのは1月20日の午後だった。その映像には、黒い覆面の男にナイフを向けられ、ひざまずかされている2人の日本人が映っていた。男は日本政府に身代金を請求し、払わなければ2人が犠牲になると脅迫。一本の電話から、緊迫の約2週間が始まった。

〈平成26年8月〉

 この脅迫映像が流される約5カ月前。夏の高校野球の取材で関西に出張していたときに、千葉県警キャップから「千葉市出身の男性がシリアで拉致されたという情報が出た」と連絡があった。拉致されたとみられるのは、民間軍事会社の代表という湯川遥菜さん(42)で、拉致したのは「イスラム国」と名乗るイスラム教過激派組織。テレビや新聞からは、息子の安否を心配する湯川さんの両親の様子などが報道され、その悲痛さに、高校野球の取材しながら「無事でいてほしい」と願っていた。

 しかし、国外での事態に加え、イスラム国という実態の不明瞭さのせいで新たな情報が寄せらず、湯川さんの消息がわからないまま月日が過ぎ、年が明けた。

〈27年1月20日〉

 大寒を迎えたこの日、県警キャップからの着信があった。「イスラム国が湯川さんとみられる男性を人質に身代金を請求してきた」

 突然のことで理解が追いつかない頭に、電話口からキャップの声が響いた。「オレンジ色の装束」「黒い男」「身代金要求」。断片的な情報でイメージがわかなかったが、緊急事態に陥っていることは分かった。

 インターネットで検索し、ようやく映像にたどり着くと、そこには異国の砂漠を背景に、湯川さんとみられる男性とジャーナリストの後藤健二さん(47)とみられる男性がひざまずかされている姿があった。

会員限定記事会員サービス詳細