車いすの天才物理学者、スティーヴン・ホーキング博士(73)が昨年末に人間のように考えたり学習したりする「人工知能(AI)」が将来、人類を滅ぼすと警告し、欧米でAIの危険性をめぐる議論が過熱している。米マイクロソフト(MS)の研究部門、マイクロソフトリサーチ(MSR)のトップが今年に入り、「(AIは)人類の脅威とはならない」と公式に反論したところ、MS創業者で元会長のビル・ゲイツ氏(59)がAIの危険性を説いてこれに再反論したためだ。
わずか1時間後に…
ホーキング博士らのAI危険論に異議を唱えたのはMSRトップで、米人工知能学会の元会長でもあるエリック・ホロビッツ氏。
英BBC放送の1月28日の取材に対し、「長期的にみて、(自身で進化する)AIをコントロールできなくなるという懸念はあったが、私は基本的にそういうことは起こらないと思う」と主張。「最終的に長い人生で、科学、教育、経済などの分野でAIから信じ難いほどの利益を得ることになる」と訴え、AIが未来の人類に多大な貢献を果たすとの見方を示した。
ところが、これに瞬時に噛み付いたのが米ソフトウエア大手であるMSを創業したゲイツ氏。翌1月29日付の英紙デーリー・メール(電子版)などによると、ゲイツ氏は28日に米で開かれたインターネット系のイベントで、古巣の技術部門のメンバー約1000人を束ねるホロビッツ氏の発言がネットにあがってからわずか1時間後に「私もAIに懸念を抱く側にいる一人だ」と真っ向から反論。「当面、機械はわれわれのために多くのことをしてくれるはずで、超知的にはならず、うまく管理できている場合はプラスに評価できるが、数十年後には知能が強力になり、懸念をもたらす」とAIの潜在的な危険性を指摘した。