秘録金正日(11)

瀬戸際シナリオに逆らった金日成 自らは「スイス亡命準備していた」

 父の死亡を確認した後、金正日(キム・ジョンイル)が真っ先に打った手は、金日成(イルソン)の護衛部隊の不測の動きを封じることだった。自分の親衛隊に父の警護に当たる「1号護衛総局」を徹底的に監視し、「戦闘態勢を維持するように」と命じた。その上で、軍の掌握に乗り出した。

 父が主催するはずだった朝鮮労働党中央常務委員会会議が、直ちに開かれた。金正日はその場で、朝鮮人民軍に絶大な影響力を持つ人民武力部長、呉振宇(オ・ジヌ)と軍総参謀長の崔光(チェ・グァン)、加えて、首相の姜成山(カン・ソンサン)以下政府関係者や金日成の実弟の金英柱(ヨンジュ)ら党・政・軍の要人らに自らへの忠誠を誓わせた。

 金日成の遺体はヘリコプターで平壌に運ばれた。

諜報網は機能せず

 その死から約20時間たった1994年7月8日午後10時ごろ、北朝鮮は、主要な在外公館に「主席死去」を通知する。だが、中国政府は通告前から事実をつかんでいた。ドイツを公式訪問中だった首相、李鵬は8日、夕方以降の予定を全てキャンセルし、ホテルに閉じこもっていた。

会員限定記事会員サービス詳細