安倍政権考

朝鮮総連本部「継続使用」 日本政府沈黙の裏側

 日朝協議は、「夏の終わりから秋の初め」で合意していた昨年の初回報告がほごにされ、遅々として進展せず、北朝鮮が交渉を打ち切る可能性も否定できない状況に陥っていた。日本政府は、あくまで「民間の取り引き」によってでも朝鮮総連が本部ビルを継続使用できることで新たな交渉の糸口を探ることもできると踏んでいる。

 一方、日本政府内には継続使用について「朝鮮総連の既得権益が単に維持されただけで、北朝鮮が新たな利益を得ることにはならない」(関係者)として、拉致問題にプラス材料にはならないとする分析もある。

 また、債務者や、債務者をバックにした業者が競売物件を買い戻す行為は「その資力があれば弁済に充てるべきだ」として民事執行法で禁じられている。しかし、落札後に転売された同一物件を継続して使用することを想定した規定はなく、継続使用は、いわば法律の抜け穴をつく「脱法ケース」だったといえる。

 政府内には「血税を使った不良債権問題で、債務者が立ち退かずに入居し続けることに国民の理解が得られるはずもない」(政府高官)との意見もある。

 いずれにせよ、朝鮮総連が本部ビルに居座ることができることになったことで、日本政府は拉致問題を前進させるしかない。

(政治部 比護義則)

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