安倍政権考

朝鮮総連本部「継続使用」 日本政府沈黙の裏側

 菅義偉官房長官は、転売の話が明らかになった1月23日の記者会見で、こうした見方を払拭するかのように、本部ビルをめぐる動きについて「裁判所による競売手続きを経て、マルナカホールディングスに移転した。後は民間のことだから、それ以降について政府として承知していない」と関与を否定した。外務省や情報機関関係者も異口同音に否定している。

 政府が否定に躍起になるのには理由がある。

 競売問題は、破綻処理で多額の公的資金が投じられた在日朝鮮人系信用組合の不良債権問題が根底にある。競売は朝鮮総連に対する約627億円の債権を引き継いだ整理回収機構が申し立てたもので、政府が朝鮮総連の継続使用に少しでも手助けしたことが発覚すれば国民の反発を招くのは避けられない。

 競売問題は、野田佳彦政権が拉致問題解決に向けた日朝協議を進めるため、競売回避をめぐり朝鮮総連と秘密裏に協議したことがある。しかし、24年12月の衆院選で民主党は敗北、政権は安倍晋三政権になったことで白紙に戻っていた。

継続使用の賛否交錯

 結局、日本政府の関与の有無とは無関係に朝鮮総連が本部ビルを継続使用することで、北朝鮮が訴え続けてきた要求は実現したことになる。

会員限定記事会員サービス詳細