振り込め詐欺 誰がだますのか

手口多様に、私書箱悪用 埼玉

 ■被害者との接触少なく 罪悪感なし

 振り込め詐欺の主流は、今は「振り込め」ではない。警察の対策をすり抜けるように手口は変化。名前の由来となったATM(現金自動預払機)への「振り込み型」を抜いて、被害者から直接現金を受け取る「手交型」が最多となり、さらに現金を宅配便などで送らせる「送付型」が急増している。

 1月21日、県警が詐欺未遂容疑で逮捕した草加市の男(30)の私書箱には、少なくとも全国の男女約50人から、計3億3500万円の詐欺被害金とみられる入金が確認された。送付型の送り先として使われているのが、この私設私書箱だ。

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 経済産業省によると、私設私書箱の開設に届け出や許可は必要なく、荷物を受け取る場所さえ整えばいい。郵便局の私書箱のように私書箱番号の記載がないため、実在する事務所などを装うことができる。

 県警生活安全企画課によると、平成25年は700件中24件(3・4%)だった送付型は、26年に1158件中97件(8・4%)に増加。手交型やATMの引き出し額に上限がある振り込み型より1回の被害額が大きく、被害者と接触しないため受け子が逮捕されることもない。

 状況を重く見た県警は昨年、私設私書箱オーナーの摘発に重点を置き、10月に初めて特殊詐欺事件で私書箱オーナーの男を逮捕。ただ、「『荷物を預かっただけ』としらを切られると関与を立証するのが難しい」という。摘発されたケースでは、私書箱内に、かけ子らとのやりとりを記したメモなどがあったことが立件への決め手となった。

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 「高齢者がカネを持っていて何の意味がある。俺たちがそのカネで日本の経済を回してやっているんだ」

 県内で摘発された振り込め詐欺グループのリーダーは、悪びれもせず、こううそぶいた。振り込め詐欺犯に共通するのは「罪悪感のなさ」だと捜査関係者は言う。殺人や強盗のように直接人を傷つけるわけではなく、被害者と接する機会も少ないためだ。

 役割分担や手口が巧妙化した現在では、リーダー役にたどりつくことすら難しい。受け子やかけ子を逮捕しても、「本当のことを話せば、組織の人間から抹殺されることを恐れて何も話さない」(捜査関係者)。楽に稼げる方法を知っているから肉体労働も続かず、また同じような犯罪に手を染める。

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 「残りの人生、どうしたらいいのでしょう」

 老後のために蓄えてきた財産。犯人が逮捕されても、大半のケースでだまし取られた現金は返ってこない。家族から責められ、引きこもりになったり、「恥ずかしいから家族には言わないで」と警察に懇願し、被害届すら出さない高齢者もいる。

 捜査関係者は「相談すらできずに泣き寝入りする被害者もいることを思えば、本当はもっと莫大(ばくだい)な現金がだまし取られているのかもしれない」と話し、こう呼びかける。

 「人ごとだと思わず、振り込め詐欺のニュースや啓発に耳を傾けてほしい。若い世代も日頃から両親と連絡を取ることが予防になる。警察も最善の手を尽くすが、だまされないように努力してほしい」(川峯千尋、菅野真沙美が担当しました)

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