ベランダがだめなら、室内で換気扇の下で吸おうと思うかもしれない。しかし、岡本弁護士は「名古屋地裁の判決からは、自分の部屋(専有部分)で喫煙する場合も、他の居住者に不利益を与えているなら制限すべきと解釈できる。外に煙が流れる換気扇の下で吸うのも、苦痛に感じるという人がいる場合には認められない」という。
苦痛に感じる人がいる場合はだめというのなら、魚を焼く臭いが嫌だという人がいればマンションでは魚を焼くこともだめなのか、という疑問もわく。最近は「子供の声がうるさい」とトラブルになっているケースもあるが、苦痛に感じる人がいるなら子供が騒ぐのも許されないのだろうか。
この疑問に対して、日本学術会議の要望書「脱タバコ社会の実現に向けて」(平成20年)を取りまとめた東京大学の唐木英明名誉教授は「他人に苦痛を与えているかどうかは、健康に被害を与えているかどうかで考えるべきだ」と指摘する。
吸うのなら「注意を払う義務」
魚の臭いや子供の声を苦痛に感じる人がいたとしても、実際に精神的あるいは肉体的な被害を与えていない限りは社会的に許容される。一方、受動喫煙が肺がんや心筋梗塞(こうそく)などの健康被害を引き起こすことは、世界保健機関(WHO)が2004年、科学的根拠をもって示している。日本は2005年にWHOの「たばこ規制枠組条約」を批准しており、公共の場所での禁煙は国として取り組むべき課題でもある。