正論

ヨルダンの難問と「国際協調」 フジテレビ特任顧問、明治大学特任教授・山内昌之

 私が一番最近にヨルダンを訪れた昨年11月のことを思い出す。首都アンマンのヨルダン大学において、「第一次世界大戦から100年」という英語講演を行った時のことだ。のべ200人くらいの教員や学生を相手に、2014年こそ国際政治と世界史の転換点になるかもしれないと話したのは、イスラム国(IS)のような疑似国家が戦争とテロによって中東秩序に正面から挑戦していたからだ。

 講演では、ISの出現こそ冷戦後の前提だった大国間の平和や国際秩序の枠組みを解体しかねない緊張を増大させ、「ポスト・冷戦期の終わり」を画する異次元の危機をもたらすと説いた。

 《無視できない米国の外交意志》

 覇権国家アメリカの影響力が後退する一方、グローバルな多極化現象は中東から黒海に及ぶ旧ロシア帝国と旧オスマン帝国に属した領域の不安定化と内戦による非情な地域主義の台頭こそ、今回の後藤健二氏の解放をめぐる日本とヨルダンとISとの関係に複雑な要素をもちこむ要因なのである。

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