低品質でも安い中国が…突然、会社が危機に…クレーム数々がヒントに
はんだ付けとは、鉛とスズでできた「はんだ」を「ごて(こて)」で熱で溶かして固めることで接着剤のように使い、電子部品と基板などを接合させる技術。接合させる物自体は溶かすことなく、接合部を再加熱すれば修正が可能なため、溶接などとは異なるメリットを持つ。
野瀬さんがはんだ付けに関心を持つようになったのは、ある出来事がきっかけだった。
ノセ精機で専務だった平成12(2000)年。小型の光センサーを納めていた取引先から突然、納品打ち切りの連絡を受けた。人件費が安い中国の企業に発注する、というのだ。当時、この製品を1日3万個出荷し、年間で1億5千万円を売り上げていただけに、思い直してもらうよう交渉したが、抵抗もむなしく2年後に受注がゼロになった。
これまでは取引先の言うがまま、納期と品質を守っていればよかった。だが、契約が打ち切られて新たな「食い扶持」探しに迫られ、「ネズミ捕獲シート」の製造など本業と関係ない分野にも手を伸ばしたが、売り上げはかつての10分の1に落ち込んだ。
クレームがヒントに
方向性が見いだせないまま2年近くが過ぎた16年のこと。事務所の棚にあった赤いファイルが目に留まった。光センサーを出荷していた当時のクレームをまとめた資料だった。
「はんだ付けを忘れている」「はんだがなじんでおらず、すぐ部品が外れる」
読み進めると、すべてはんだ付けに関する苦情だった。はんだ付けの重要さと技術の未熟さを思い知らされた。