日本の議論

精神的不調による退職「13%」 特に「派遣」「契約」に多い労務実態  

 直属の上司は営業責任者でもある「社長」だった。「朝8時に家を出て帰宅は午前様。社長は提案力で仕事を落とす実力派だが、僕には感覚的にモノを説明する社長の言葉が分からない。だから自分の仕事の範疇が、どこからどこまでなのか見えなくなった」。質問したいのに尋ねられない質問下手になり、社内の他部署の人にさえ質問できず、仕事を抱え込んだ。

 そして入社半年で、疲れて起き上がれないなどの鬱症状を起こして休職した。「社長はじめ皆さん心配してくれた。僕の復職後のためにと、誰がどの仕事をするのか、仕事の分業体制も構築してくれていた」。1カ月後に復職したが、繁忙期を迎え、以前と変わらぬ職場環境に逆戻りした。

 「実はその職場、精神的不調で休職と復職を繰り返している女性がいたんです」。社長が「(働き続けるのは)あの子は難しいかも」と話していたのが頭の片隅に残った。そして数カ月後、再び自身が鬱症状を起こして2度目の休職に至ったとき、「もう次は(休職状況に)ならない、という保証がないと困る」と言われ、さらに傷病手当申請をしようとして拒否されたことで退職の覚悟を決めた。「次は不調にならないなんて、僕には保証がない」。創業から働く人は幹部だけ、ウェブ制作業務に関わる社員は激務などのため数年で入れ替わる職場と後から知ったが、働き続けようと思っていた会社を1年で辞めることになった。

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