派遣社員や契約社員といった非正規社員では働き続けられないのか? そんな疑問がわき上がる結果だが、同機構調査・解析部の担当者は「非正社員は雇用に対して有期契約で、傷病後に働き続ける制度がない。また、正社員と比べ、今までの職歴や病歴が問われることが少ない分、入職のハードルは低い。通院加療が必要だが働きたい人の受け皿にもなっている」と指摘する。同機構の調査面談を受けた、精神疾患を抱える派遣社員は「派遣という形態があるからこそ、通院しながら働ける」と訴えたという。契約、派遣社員だから退職しがちという社会通念がある一方で、長い目で見ると自分で働き方を調整できるというメリットもあるのだろう。
「派遣社員などは休職制度などが未整備で退職せざるを得ないのが実情だが、正社員も退職せざるを得ない状況は、職業生活と通院治療の両立が難しさの一端を示している。さまざまな状況を抱えた人が混在する職場が成り立つような環境が必要だ」(担当者)
8年間に4回の転職を経験して
関東地方在住の会社員、田中一郎さん(仮名、32)は大学卒業後、精神的不調がもとで、8年で4回の転職を経験、今は5つ目となる職場で3年働き、自身の最長記録を更新中だ。
ネットビジネスに将来性を感じた田中さんは、中規模商社のネットビジネス担当として新卒入社した。3年後には起業したいと考えていた田中さんは、東京で知り合ったIT起業家と意気投合し、商社は2年で退社。自らネットビジネスで起業したが、半年ほどで精神的不調に見舞われ、再就職することに。十数人規模のウェブ制作会社で営業職として働き始めた。